ノーベル化学賞を受賞した北海道大学名誉教授の鈴木章さん(80)は6日夜、同大学内で記者会見に臨み、「今日の栄誉は、共同研究の先生方や学生、北大、それにいろんな化学の分野の成果のたまものと考えています」と喜びの言葉を口にした。
午後8時すぎ、テレビカメラ十数台、100人近い報道陣が詰めかけた会議室に姿を現した鈴木さんは、淡々とした表情。職員から花束を手渡され、拍手が起こってもあまり表情を変えず、カメラマンから「笑顔をお願いします」との声が飛んだ。
「本日は図らずもこのような名誉ある賞をいただき、非常にうれしく思います」と切り出した鈴木さんは、多くの同僚や教え子らの協力に感謝をしつつ、特に米パデュー大学時代の恩師、H・C・ブラウンさんの思い出を語った。
鈴木さんは昭和38年から2年間、パデュー大学に留学し、そのときに「現在の研究のサジェスチョンをしてくださり、研究の態度など特に印象に残っている」と言う。
鈴木さんによると、ブラウンさんは2005年に92歳で死去したが、90歳の誕生日のときに記念講演会に出席した鈴木さん夫妻をレストランに招待したブラウンさんは、食事の席で「お前をノーベル賞候補にノミネートしたい」と打ち明けたという。
「びっくりしましたが、ワイフには恥ずかしいから誰にも言うなと言ったんです。そしたら講演会の最後に、ブラウン先生がノーベル賞の候補にノミネートしたいと言っちゃった。それから2年後にお亡くなりになったが、生きていればご報告できたのにと思うと、非常に残念です」と鈴木さん。
鈴木さんがこの日、受賞の一報を聞いたのは午後6時20分すぎ。最初、外国からの電話を奥さんが受け、すぐに切れてしまったが、「今日のこの時期だから、アンビリーバブルなことが起こったのかもしれない」と奥さんに話したという。
その後、再び鳴った電話は、果たして本当にノーベル委員会からのもので、「おめでたい話をしたい」と切り出してきたという。
「発表は6時45分ということで、絶対にそれまでは話さないでほしいと言われた。私の自宅にも新聞記者の人がだいぶ来ていて、寒い中、悪いとは思ったが、15分くらい外で待ってもらった」と、受賞決定の瞬間について語る。
鈴木さんの業績は、企業が応用するなど社会に還元されているが、「大学の先生はみなさん、社会に貢献する仕事をしたいと考えている。でもなかなか思うようにはできないものです。その意味で、私は非常にラッキーだったと思う」と鈴木さん。
また恩師のブラウンさんからは、「教科書に載るような研究をするように」と言われていたそうで、「私も肝に銘じて、学生の諸君にも教科書に載るような研究をしようと言ってきた。もう一つ学生に言ってきたのは、重箱の隅をほじくるような研究だけはするなということ。誰もやっていない新しい研究をしようと言ってきました」。
学生時代からほぼ北海道大学一筋で過ごしてきた鈴木さんだが、「札幌は今も郊外に行くと森もあり、川もあり、非常にいいところです。研究するにも静かな環境の中で勉強するというのはいい。ここの研究所で不都合を感じたことは一度もなく、ここで研究を続けられてよかった」と振り返る。
さらに、最近の若者の理科系離れを憂い、「日本は資源も何もないところで、人間の頭しかない。もう少し若い人が理科系に興味を持ってもらうことが大事なんじゃないか。これからはそういう若い人たちのために少しでも役に立つような仕事をしたい」と、これからの活動について意欲を示した。
お人柄が伺えるような内容ですね。是非若い人達の為に積極的な活動を今後もして頂きたいですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿