ノーベル化学賞が、北海道大学名誉教授の鈴木章さんと米国パデュー大学特別教授の根岸英一さんに決まった。物理学賞と化学賞で4人の日本人受賞者を出した一昨年に続いての快挙である。
アジア諸国の台頭が目立つ中、この受賞の勢いを日本の科学技術の研究開発力をさらに伸ばしていくための原動力としたい。
鈴木さんと根岸さんは、有機合成化学に新時代をもたらした革新者だ。異なる有機化合物同士をつなぐ反応は非常に困難だったのだが、金属のパラジウムに仲立ち役をさせることで実現した。
異なる化合物を結合させることから「クロスカップリング」と呼ばれるこの反応は「スズキ反応」「ネギシ反応」などともいわれ、製薬産業や電子産業の現場で利用されている。
抗がん剤や抗HIV(エイズウイルス)剤、液晶や伝導ポリマー、発光高分子材などがその例だ。世界中で広く使われている先端技術が日本人の頭脳から生まれたことを誇りとしたい。
2000年の白川英樹さんの化学賞以降、日本のノーベル賞は順調に伸びている。
鈴木さんと根岸さんのダブル受賞で、日本人のノーベル賞受賞者は、米国籍の南部陽一郎さんを含めて計18人となった。化学賞では7人という躍進ぶりだ。
若手研究者には、近年のこうした勢いを励みとして、独創的でスケールの大きな研究に取り組んでもらいたい。
だが、日本の科学技術研究の現状には気になる点が少なくない。大学や政府系研究機関などでは運営予算が減り、若手研究者は安定した職を得にくくなっている。
また、短期間で確実な成果を求められるので、若手による研究上の冒険も減っている。留学希望も少なく、「内向き志向」が問題になるなど将来が気がかりだ。
鈴木さんや根岸さんに続き、次代を担う研究者たちが世界をリードしていくことを期待したい。
そのためには海外での武者修行に尻込みしていてはだめだ。国も研究の短期成果主義を改めて、優秀な若手が落ち着いて研究できる環境を整えることが必要だ。
ノーベル賞には国民を勇気づける力がある。資源小国の日本にとって、科学技術が果たす役割は限りなく大きい。
日本は資源がない国です。その意味で人こそ大きな資源ですから教育研究に対して明確な戦略を立ててもっと資金を投入しても良いのではないでしょうかね。
0 件のコメント:
コメントを投稿