2010年9月3日金曜日

マウスの体内にラットの膵臓

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いてマウスの体内にラットの膵臓(すいぞう)を作らせることに、東大医科学研究所の中内啓光教授らの研究グループが成功し、3日付の米科学誌「セル」に発表した。中内教授らは、ブタなどの大型動物にヒトの臓器を作らせることを目標にしており、今回の成果を「臓器再生の実現に向けた第一歩」と位置づけている。
中内教授や科学技術振興機構(JST)の小林俊寛研究員らは、膵臓を作れないように遺伝子を改変したマウスの胚(はい)盤胞(受精から3〜4日目の受精卵)に、正常なラットのiPS細胞を注入。この胚盤胞をマウスの子宮に移植し、マウスとラットの細胞が混ざったキメラマウスを誕生させた。キメラマウスの膵臓は、ラットのiPS細胞だけに由来し、正常に機能して成体に育つことを確認した。
特定の遺伝子が欠損したマウスの胚盤胞に、多能性幹細胞を注入して、生まれてくるキメラの欠損組織を多能性幹細胞由来の細胞で置き換える方法は「胚盤胞補完法」と呼ばれる。
これまでに、ES細胞(胚性幹細胞)を使ったマウスでの成功例などが報告されているが、マウスとラットのような異種の哺乳(ほにゅう)類で正常に育つキメラを作るのは難しかった。
中内教授によると、ヒトiPS細胞にはキメラ形成能がない可能性があり、国のガイドラインではヒトのiPS細胞やES細胞を動物の胚に注入することは禁じられている。
臨床応用へのハードルは高いが、「現在の再生医療は細胞での治療を目指しているが、個体の中で臓器を作れることが示せた。ブタの体内でヒトの臓器を作るなど臓器再生の入り口に立てた」と話し、今後も基礎研究を進めるとしている。様々な難しい問題が横たわっているのでしょうが基礎研究はたゆまず続けていって欲しいですね。

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