世界遺産登録抹消の危機にある景勝地、ベトナム・ハロン湾の水質改善に、日本の「生活の知恵」を役立てるプロジェクトが、今夏スタートした。湾内で暮らす水上生活者らを対象に環境活動支援団体などが協力、少量の洗剤で洗い物ができるアクリルたわしを普及させる取り組みで、関係者は「現地の住民に環境への意識を高めてもらえれば」と話している。
ベトナム北部にあるハロン湾は、湾内に石灰岩質の島や奇岩が点在し年間200万人が訪れる景勝地。1994年にユネスコの世界自然遺産に登録されたが、近くの鉱山から排出される物質に加え、観光客の増加でホテルや観光船が増加して水質が悪化している。
昨年から水質調査などを行っている大阪府立大大学院工学研究科の大塚耕司教授によると、湾の透明度は現在2〜3メートルで大阪湾の一部と同程度。水質を保全しなければ、単独では影響を及ぼさない程度の生活排水も加わって、さらに「悪化する恐れがある」(大塚教授)という。
「たわし作戦」は、平成19年から大阪府立大と共同で住民参加型の環境保全活動に取り組む公益財団法人「地球環境センター(GEC)」(大阪市)などが実施。これに、大阪府内で水質の保全活動を支援する「せいわエコ・サポーターズクラブ」の原田さんが協力している。
原田さんらが8月16日から現地入りし、船や筏(いかだ)で暮らす住民を対象に講習会を開催。食器洗いの際に使う水と洗剤の量などを講義したうえで、ほとんど洗剤を使わずに汚れがとれるアクリルたわしの編み方を指導。
2つの村で計17人が参加し、参加者が実際に長さ約10センチ、幅約15センチのアクリルたわしを編んだ。
GECによると、ハロン湾で漁によって生活を営む水上生活者は使い古した漁網で食器を洗っており、洗剤は1世帯で1日約20ミリリットル、水は1日約20リットル使用。アクリルたわしを使えば、これが半分から3分の1以下に減らせるという。
今後は、参加者を地域のリーダー役としてまず講習会を開催したクアバン村の全世帯に配布。一定期間後に普及度と使用頻度、洗剤の使用量などを調べ、さらなる普及につなげたいとしている。
指導した原田さんは「水上生活者が水質悪化の直接の原因というわけではないが、アクリルたわしを使うことで水質への意識が高まる。それが住民それぞれが生活を見直し、地域全体でハロン湾を守るという意識の高まりにつながると思う」と期待している。日本の知恵が世界遺産を救う一つの手段や意識の高揚につながっていくと良いですね。
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