クモの糸は強度や伸縮性に優れ、環境にも優しい“スーパー繊維”だ。人工合成や量産化は困難といわれてきたが、山形県鶴岡市の学生発ベンチャー「スパイ バー」は独自の人工合成技術を開発し、実用化にめどをつけた。人工クモ糸を用いた試作品を来年にも発表する予定で、関山和秀・代表取締役社長(28)は 「世界初の実用化を目指す」と意気込む。特性の異なる糸のオーダーメード生産も可能で、合成繊維や炭素繊維に続く新素材として注目されている。
クモがぶら下がるときの「牽引糸(けんいんし)」はナイロンに比べて強度が3・5倍、伸縮性も4倍にのぼる。衝撃吸収力は鋼鉄の数十倍で簡単にはち ぎれず、0・5ミリの太さなら体重60キロの人間をつるすことが可能だ。耐熱性は炭素繊維に劣るが少なくとも摂氏250度には耐えられ、原料がタンパク質 なので生分解性もあって環境に優しい。
優れた特性に着目し、クモの糸を実利用につなげる試みは以前からあった。しかし、共食いするクモはカイコのように大量飼育ができず、遺伝子工学を用いた人工合成も非常に難しかった。
人工クモ糸の可能性は天然クモ糸の模倣にとどまらない。鍵となるアミノ酸の配列を変えれば多様な特性が実現でき、顧客の求めに応じたオーダーメードの繊維が生産できる。
実用化後は、注文を受けてから試作品の完成までに約3カ月、量産を経て市場に供給するまでなら1年以内を目指す。生産現場には無数の発酵タンクが並び、ビール工場のイメージに近いという。
一方、微生物の発酵に使う糖蜜などの値段は石油の安さにかなわないので、ナイロンなどに比べると割高になる。用途は航空機の機体や人工血管など優れた特性を生かした付加価値の高い分野が中心となりそうだ。優れた特性を持っているようですので多くの分野で応用展開されていくと面白いのかもしれませんね。
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