2010年11月1日月曜日

左手のアーカイブプロジェクト

神戸を拠点に活動するピアニスト智内威雄さん(33)=大阪府箕面市=は、世界中から「左手の曲」の楽譜を集めている。難病のジストニアを発症して右手が動かなくなった時、左手だけで演奏できる作品が数多くあることを知って救われた。「埋もれている楽譜を音に残したい」。11月に左手だけで演奏したピアノ曲のCDを発売する。
「左手の曲」は、病気やけがで右手が使えない人や技術を向上させたい演奏家のために作られた作品だ。「曲の骨格は低音にある」(智内さん)ため、高音階の鍵盤が中心の右手の曲より多く、世界に千曲以上あると言われる。
智内さんは東京音楽大学ピアノ演奏科コースを卒業後、ドイツのハノーファー音楽演劇大学に留学。国際コンクールで入賞を重ねて活躍していた2001年、運動障害を起こすジストニアを突如発症し、右手が動かなくなった。
3年間のリハビリで、簡単な曲なら両手でも弾けるようになった。しかし、「右手を失うつらさを経験した自分だからできる音楽もある」と思い定め、左手のピアニストとして生きることを決意した。
治療中にドイツの医師から渡された左手の曲の楽譜をはじめ、ベルリンやハンブルクの図書館を回ったり、国内外のピアニストや作曲家に頼んだりして、約300曲を集めた。06年からは国内外で約100回の演奏会を重ねた。
智内さんが集めた楽譜の中で最も古い曲は、1700年代に活躍したバッハの息子カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの「片手のためのピアノ曲」。ヨーロッパでは2度の世界大戦で片手を失うピアニストが多く、20世紀の作品が多いという。
CDへの収録は知人で映像作家の藤井さん、音響作家の君島さんと共に今年6月から始めた。題して「左手のアーカイブプロジェクト」。図書館や教育施設に「左手の曲」のCDやDVDを並べることを目標に、収録を続けていくという。
是非頑張って片手を失ったピアニストは元より多くの聴衆を感動させる演奏を続けて下さい。

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