佐賀大学医学部の野出(ので)孝一教授=循環器内科=らの研究グループが、ヒトの体内時計の新たな測定法を発見した。体毛から特定物質を抽出して活性の度合いを調べる手法で、血液や口内の粘膜から測定する従来の方法より、簡単で精度が高いのが特徴。睡眠障害や循環器病など、体内時計の乱れが根底にあるとされる疾病の治療・予防方法の開発や、生活リズムと生理機能との関係を解明する研究に役立つ。24日の米国科学アカデミー紀要で発表する。
体内時計は、生物が進化の過程で獲得した機能で太陽の24時間周期に適応する。ヒトの場合、「時計遺伝子」が全身の細胞にあり、脳の特定部位がそれらをつかさどって血圧や心拍数、睡眠などの生理機能を制御しているとされる。
野出教授と山口大時間学研究所の明石真教授、ソニー先端マテリアル研究所でつくるグループは、体毛を凍結処理すれば、遺伝子関連情報が損なわれないことに着目した。頭髪やひげの毛根細胞を処理して、時計遺伝子がタンパク質をつくる際の中間物質「メッセンジャーRNA」を抽出。その量や活性の度合いを解析して「体内時刻」を測定することに成功した。
佐賀県の20~30代の成人男女4人を対象に体毛5本を4時間おきに抜いて調べたところ、早起きの人は活性のピークが早く訪れた。このうちの一人が4時間の早起きを3週間続けたら、ピークは約3時間早まり、体が生活習慣に対応している様子がうかがえた。
1週間ごとに昼夜勤務が交代する県内の製造関連工場でも調査。昼夜勤務は稼働開始時刻が9時間違うが、体内時計は2時間ほどしか変わらず、調節がほとんど効かない慢性的な時差ぼけ状態になっていた。
体内時計の乱れは、睡眠障害や精神疾患、循環器病など広範に関係しているといわれている。朝方に頻発する心筋梗塞(こうそく)や夜中のぜんそくなども時計遺伝子の異常が疑われており、野出教授は「測定法を早期に実用化し、個人の体内時刻に合わせた効果的な投薬で抑えたり、時計遺伝子そのものを標的にした治療ができるようになれば」と話す。
測定法は時差ぼけの研究にも貢献でき、スポーツ分野でも「選手の効果的な海外派遣のタイミングや体調管理に役立つ」とみている。
今後は、採取する体毛の本数や回数を減らして分析する方法の確立や、医療現場に普及させる測定機器の開発を目指す。 体毛から体内時刻が測れるなんて考えられない事ですね。医学は考えられないスピードで様々なものを解き明かしつつあるといった感じですね。様々な分野に応用も可能なようですから測定法をより簡便な方向に進めて欲しいですね。
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