2010年8月2日月曜日

女流王将に挑むコンピューター

「プロ棋士並み」とされる将棋ソフトの連合チームが10月11日、清水市代・女流王将に挑戦する。情報処理学会(白鳥則郎会長)の「トッププロ棋士に勝つためのコンピュータ将棋プロジェクト」の一環で、日本将棋連盟(米長邦雄会長)が受けて立った。3年半ぶりとなるプロ棋士との“真剣勝負”で、コンピューターはどんな進化を見せるのか。
将棋ソフトは、棋士と同様に、序盤、中盤、終盤で3通りの頭脳が働く。定跡通りの指し手を目指す序盤と、「詰み」の可能性をしらみつぶしに検討する終盤は、膨大な記憶量と高速計算を誇るコンピューターが得意とするところ。課題は、的確な形勢判断を求められる中盤の強化だった。
新風を吹き込んだのは、理論化学者の保木(ほき)邦仁さん(電気通信大特任助教)が開発し、2007年3月に渡辺明竜王に挑戦した「ボナンザ」だ。
形勢判断では、駒の損得や配置などを数値化した多くの指標(パラメーター)を設定し、多次元関数をつくる。従来は、棋力の高い人間がつくった評価関数をコンピューターに教え込む手法が一般的だったが、棋力の低い保木さんは評価関数づくりを機械まかせにした。膨大なプロの棋譜から優勢に導く条件をコンピューターに学習させ、評価関数を進化させたのだ。
渡辺竜王には敗れたものの「機械学習での強化に、ボナンザが成功しみんなが取り組み始めた」と、昨年の世界コンピューター選手権で優勝したGPS将棋チームの田中哲朗東京大准教授は語る。
人間が評価関数を決める手法では、パラメーターはせいぜい数百個だったが、今年の選手権を制した「激指(げきさし)」では50万個。約1千倍と爆発的に増え、将棋ソフトの棋力はプロ棋士と肩を並べるまでになったとされる。
激指を開発した北陸先端科学技術大学院大の鶴岡慶雅准教授によると、機械学習は機械翻訳や音声認識では一般的に使われ、人間が知識に基づいてプログラムを作る方が珍しいという。典型例は大手検索エンジンの入力サジェスト機能で、人間の作業ではとてもこなせないほど、流行言葉やスラング、顔文字などを貪欲(どんよく)に取り込んで変換に反映させている。
しかし、機械学習にも“落とし穴”はある。検索で突拍子もない項目が第一候補に出てきたりするのがその例だ。パラメーターが多すぎて原因をたどるのも難しく、部分的な修正は簡単ではない。
今回の対局では、東京大の並列コンピューター上で4種類のソフトが合議制で指し手を決める。「文殊」と名付けられた合議システムを担当する電気通信大の伊藤毅志助教は、その狙いを「大きな悪手を防ぐため」と説明する。
複数の予報の平均や多数決で決める手法は気象庁の長期予報でもとられ、コンピューターの判断ミスを防ぐテクニックとして期待されている。
挑戦を受けた米長会長は「答えが一つしかない局面では、コンピューターは桁違いに正確で速いが、有力候補がいくつもあるような複合的な判断では人間の方が勝る。もちろん清水(女流王将)が勝つ」と語る。
一方、情報処理学会のプロジェクトで副委員長を務める公立はこだて未来大の松原仁教授は「コンピューターが95%勝つ」と強気だ。プロジェクトの最終目標は竜王、名人に勝つこと。松原さんは「(現名人の)羽生善治さんにコンピューターが勝てば、機械学習と合議制の組み合わせで、人間の直観のような機能を持てたといえるかもしれない」という。プロ棋士との対局で有効性が実証されれば、乗り物の自動操縦や医療現場でも、機械学習と合議制の採用が進むかもしれない。
対局は、東京都文京区の東京大本郷キャンパスで行われる。
単なる将棋の勝ち負けを超えて人間の知性への挑戦といった感じになって来ていますね。また、その技術が様々な現場に応用できるほどの高さを持っているのにも驚かされますね。最後は神の創造した人間の英知と人間の作った英知との戦いの様相ですね。女流王将に勝って欲しいと思いますが結果はどうなるでしょうかね?秋までの長い期間ゆっくり待ちましょう!

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