2010年12月4日土曜日

マグネシウム合金製の鋳物を製造する新たな技術

福井大学は、軽くて強度の高いマグネシウム合金製の鋳物を製造する新たな技術を開発した。鋳型に網状のステンレスを用いることで、砂や石こう、金属を使った従来の鋳型に比べ様々な形状の鋳物を作りやすい。従来より低コストで短時間に鋳造できるという。使う人によって形や大きさが異なる医療器具などの製造に向いており、企業と組んで用途を開発する。
福井大産学官連携本部の米沢晋教授らが中心となって開発した新工法は、セ氏600~700度に加熱して溶解したマグネシウム合金を筒状のステンレス製の網に流し込む。網の目を適当な大きさに調整すると合金が漏れ出さずに固まり、筒状の鋳物ができあがる。
網は柔らかく、自由に変形できるので、様々な形状の鋳物を作ることができる。例えば、球状の網の内側に、炭素繊維でできたフェルトの球を置いた鋳型を用いると水に浮く鋳物も製造できる。
新工法は、形状が少しずつ異なる複数の鋳物を短時間で作るのに適している。米沢教授らは多品種少量生産が求められる医療器具や、工業製品の試作品といった分野で需要があるとみている。
網の鋳型は時間とコストの削減にもつながる。通常の鋳型は、鋳物と同じ形をした木や発泡スチロール製の模型を砂で包み固めて製作する。鋳型として使う前に分解し、内部の木を取り外す必要がある。
新工法の場合、網で作った模型自体が鋳型となるため、この工程を省くことができる。
合金を流し込む際の鋳型の温度管理も容易になる。従来、合金が鋳型に熱を奪われて流し込んだ直後から急激に冷え、鋳型内部に行きわたる前に固まってしまう。
これを防ぐには鋳型を熱する必要があるが、合金がゆっくり冷える網の場合はこの問題が生じにくい。合金の様子が肉眼で見えるため、鋳造が成功したかどうかを常時確認できる。
マグネシウムは比重が1.7とプラスチック並みに軽い。合金の重さ当たりの強度はアルミ合金や鉄より高く、コンピューターやカメラなど軽さと強度が求められる製品に多く使われている。振動や衝撃の吸収性に優れ、リサイクル性も高いため、プラスチックの代替品としても注目される。是非企業とタッグを組んで様々な用途への活用を考えて欲しいですね。

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